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 建設業と外国人の就労ビザ

政府は建設業界の人手不足に対応するための外国人労働者の受け入れに関する素案をまとめました。
従来より国土交通省では建設業従事者の高齢化が問題とされていました。
建設業従事者の高齢化の何が問題かというと、若い世代の建設業離れにより日本の建設業における技術が衰退していくだけでなく、高齢労働者の退職により労働人口が減少してしまうということです。
以前、国交省近畿地方整備局の方のお話を聞く機会があったのですが、その時は「1年で20%の建設業従事者が減少している。高齢労働者の退職が原因だ」と大変危機感を持っている様でした。
そんな状態に追い打ちをかけた2つの要因が3.11の震災と東京オリンピックです。震災からの復興で建設業の人材を多くとられており、また東京オリンピックに必要なインフラや施設の整備にもかなり多くの建設業従事者が必要になります。
そこで、外国人の労働力が必要になりました。しかし、就労ビザ(就労の在留資格)のことで問題があります。大学や日本の専門学校等で建設や土木に関して学術的に学び、その学術的な知識をを活かした職務に就く場合には技術の就労ビザ(技術の在留資格)が許可されます(実務経験が10年ある場合も同様)。しかし、一般の土木作業員や建設・施工作業員といった就労内容では就労ビザは許可されません。
つまり、外国人で一般の土木作業員・建設作業員を補う事はできないということです。就労ビザ(就労の在留資格)の要件としては専門性が要求されます。専門性のない単純労働では就労ビザ(就労の在留資格)は許可されません。
しかし、実際に従業員不足で困っている産業もたくさん存在し、そこで外国人が労働している現場や映像を目にする事が多々あります。配偶者ビザ(日本人配偶者の在留資格)、永住ビザ(永住者の在留資格)、定住者ビザ(定住者の在留資格)等の就労制限のないビザで働いている外国人は単純労働ができますが、それ以外の外国人の場合、可能性があるのは「外国人技能実習生」です。
「外国人技能実習生」とは途上国の人材育成を目的に3年を上限とし研修生として受け入れ、賃金をもらいながら実習ができる制度です。
外国人技能実習制度の対象となるのは農業、漁業、建設業、食品製造業、繊維・衣服、機械・金属、その他に限られます。技能実習生の本来の目的は途上国の人材育成ですが、実際には人材不足対策として利用されています。
建設業も外国人技能実習制度の対象ですが、外国人技能実習制度の対象は上限が3年で、3年以上のビザ(在留資格)の更新や他の就労ビザ(就労の在留資格)への変更はできません。ですので、人材不足の根本的な解決には至りません。
根本的な解決策ではなく、震災からの復興と東京オリンピックという一時的な人材不足解消のための暫定的な解決策として、政府は技能実生のビザ(在留資格)やの取り扱いを変える事を検討していました。
最終的には 外国人技能実習制度を拡充し、現在は最長3年の在留期間を通算で最長6年までに延長が可能になり、技能実習制度で来日した経験がある研修生が再来日する場合には、帰国後1年未満では2年、1年以上では3年の在留を特定活動として認めることにより、よって通算6年の在留が可能となりました。
専門性のない単純労働に対して技術の就労ビザ(技術の在留資格)を認める事はありませんが、外国人技能実習制度の拡充や特定活動ビザ(特定活動の在留資格)の取り扱いは2015年度から実施するそうです。
建設業の人材不足の解決策とはなりませんが、人材不足だからといって、後先を考えずに技術の就労ビザ(技術の在留資格)の要件を緩和すると、建設の需要が無くなった場合に大勢の外国人が無職となってしまいます。
そう考えると安易に就労ビザ(就労の在留資格)の緩和をするべきではないと個人的に思います。今回の改正は非常に難しい問題ですが、妥当ではないかと考えます。


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